春日若宮おん祭

日本唯一のタイムカプセル

Time Capsule

芝居しばい」の始まり おん祭の「芝舞台しばぶたい」!?

おん祭の中心となる御旅所では、「芝舞台」にて、さまざまな伝統芸能が奉納されます。

その「芝舞台」で芸能を披露することが、「芝居」の語源になったと言われており、現在では、社伝神楽・東遊・田楽・細男・神楽式(猿楽)・和舞・舞楽11曲がおん祭の御旅所祭で奉納されています。

日本最大の伝統芸能フェスティバルと呼んでも、過言ではないかもしれません。

おん祭にしか残ってない芸能「細男せいのお」!?

細男を奉納する六人は、真っ白な装束を着て、顔を白い布で覆っています。
舞いは、小鼓と笛の単調なリズムで淡々と行われ、不可思議な魅力に満ちています。古くは京都の祇園や九州の宇佐でも舞われていましたが、現在まで残っているのは、おん祭だけになってしまいました。
この日本唯一の芸能を「上司かみつかさ」という家が中心となり、現在まで伝承を守り続けています。

能舞台の松は、おん祭の「影向ようごうの松」!?

能舞台の背景には、松が描かれています。
この松は、おん祭の「松の下式したしき」が行われる場所にある「影向の松」がモデルになったと言われています。
日本中世の楽書『教訓抄』には、「影向の松」に春日大明神が翁の姿で現れて、萬歳楽まんざいらくを舞った様子を「教円」という僧侶が拝見したことが記されています。
この「影向」とは、気配や音により神仏が顕現していることを意味する仏教の言葉で、「影向の松」とは、「神様が依り代とする松」という解釈になります。
現代における「能」は、人々が楽しむための演劇に近いイメージが強いかもしれませんが、その起源の一つが、春日大明神にあることは、あまり知られていません。

おん祭の「らちが明く」「らちが明かない」!?

物事がいつまでたっても進展しないことを「埒が明かない」と申します。
この言葉は、江戸時代の辞典『諺草ことわざぐさ』におん祭の「埒明らちあけの儀」が起源であると記されています。
儀式は、猿楽座の金春大夫によって行われ、「芝舞台しばぶたい」の入口に置かれた柵の中央部に巻いた紙を小刀(現在は中啓ちゅうけいの元)で切るというものです。
開幕式のテープカットを想像していただいたら、よろしいでしょう。